あの人は線の彼方へ
朱と蒼が交わるこの街から
あの人がいつか居なくなるような
そんな気がしていたの
微かに香っただけなのに
確かに私の横を通り過ぎた
道路の白線が歪む彼方へと
引き寄せられていく背中を
私は見つめることしか出来なくて
その場に立ち竦んでた
あの日から私は
朱と蒼の狭間から抜け出せない
あの人が居なくなってから
上手く呼吸も出来なくて
何にもなれず
誰にもなれぬまま
知らないふりをした人たちが
通り過ぎながら何度も笑う
私の耳に雑音が突き刺さっても
色の無い声をして微笑み続けた
あの日の香りは思い出せなくても
確かに私の中に在ったもの
朱と蒼が交わるこの街に
あの人が帰ってくるような
そんな気がしているの
馬鹿みたいに待っている
私は今も独りぼっち
あの日の2人だけを残して