鳥たちよ、自由に羽ばたいてゆけ

私たちもいつか羽ばたけると信じて

青翡翠は羽ばたく

「貴女は見た目で得をする。」

 

私が今まで男達から言われてきた言葉です。

クールで、賢くて、ミステリアスで、素敵です、なんて。定型文のような台詞ばかりで笑っちゃうわ。

そうやって勝手に私という人間を創り上げるのよ。

期待させてしまったなら申し訳ないけれど、残念ながら私はごくごく平凡な女なのです。

いいえ、謙遜などではありません。

私という女は、私の此処にだけ在るのです。

それが、私です。

現実の世界にも王子様とやらが居るならば、その御方に私を見つけて欲しかった。

けれど、朝目を覚ますと思い知るの。

そんな人、居る筈がないのよ。

私の心の外には虫が沢山群がっているのに、心の中は独りぼっち。

いつでも寂しかったわ。

 

 

「私は見た目で損をする。」

 

何だかんだで生きてきました。

そうね。ただ生きてるだけでした。

息をしている間、ずっと独りでしたから。

他所様からは近寄り難いと言われ、実際話せば、意外と普通の人なのね、なんて。

勝手に期待しておいて、酷いと思いません?

人から羨ましがられ、そしてガッカリされる。

そこまでが私の人生セットなのです。

物珍しさで寄ってきてはすぐに飽きられて、味の無くなったガムのように簡単に吐き捨てられるのよ。

男の前で嘘泣きが出来るなら、私だってそうしたかったわ。

 

 

「所詮、君は顔だけなんだね。」

 

思い返せば、恋人達から最後に言われてきました。

他人にぶつける言葉だからと軽くみて、どいつもこいつも好き勝手な事を言いやがりました。

そして最初から私との思い出なんて無かったかのように、嘘泣きするような女の所へ帰っていきました。

一度でも謝ってくれた事があったかしらね。

捨てられるのは馬鹿な尻軽女では無く、何故かいつも私の方でした。

其方が先に好きと言った癖に。

本当、馬鹿ばかりだわ。

戸籍にバツは付かなくたって、心はしっかり傷付くものよ。

 

 

私が一体何をしたというのでしょうね。

前世は極悪人だったのかしら。

それとも恨まれるような生き方をしてしまっていたのでしょうか。

それならそうと言って欲しいものだけれど、誰も何も言わなかったわ。

卑怯者ばかりで嫌になっちゃう。

 

そう。私はきっと恵まれなかったのね。

出逢ってきたのは、私の首根っこを掴んで、崖から簡単に突き落とすような人達ばかりだったわ。

哀しいという感情なんて、とっくに蓋をしてしまったわ。

 

 

「もう、生きていたくない。」

 

私は自殺を図った事がありました。

けれど、目が覚めると天井が見えました。

死ぬことさえも私を裏切ったのよ。

 

その時、初めて周りは動揺しました。

何にそんなに追い詰められていたの?

皆が私に尋ねました。

鈍感さは人を傷付けるのだと思いました。

鈍感な人には何を言っても伝わらないと諦めがつきました。

私の涙は枯れ果てました。

 

 

私は一体誰なのでしょう。

周りはいつも私の話をする時、私の知らない人の事を言っているようでした。

最初から私の頭が可笑しかったのでしょうか。

もう、自分がどんな人間だったのかさえも忘れてしまいました。

 

 

私はこの先どうやって生きていけば良いのでしょう。

解らなくなってしまいました。

大切にしていた私の筈なのに、それさえ疑ってしまうのです。

私は、子供でも大人でも男でも女でもないのかもしれません。

或いは、人間でさえ無いのかもしれません。

 

私は、何者なのですか。

 

何方か、答えを知っていませんか。

 

誰か、居ませんか。