鳥たちよ、自由に羽ばたいてゆけ

私たちもいつか羽ばたけると信じて

2021-05-01から1ヶ月間の記事一覧

灰色達夜鷹◆第三羽

旧作のDVDは、残り一枚になっていた。 どうしようかな。もう夜も遅いし、休みだからと言って昼夜逆転の生活も良くない。そろそろ寝た方が良いのは分かっているけれど、最後に残っているのはあの子と観た映画。あの頃の甘酸っぱい感情は鮮明に思い出されるの…

灰色達夜鷹◆第二羽

遮光カーテンで覆われた薄暗い部屋へ帰り着いた。 靴を脱ぎ、取り敢えず玄関先に置かれたアルコール消毒を左手に振り掛け、両手の爪先まで馴染ませる。そして、靴や被っていたキャップの帽子など、たまにしか洗わない物には除菌スプレーを軽く振り掛ける。 …

灰色達夜鷹◆第一羽

西日が瞳を突き刺す。 遮光カーテンを力なく閉め、電気もつけずソファに腰掛けた。 テレビのチャンネルだけがグルグル回る。 今、何周目だろう。 目に留まる番組は一つも無い。 退屈だ・・・。 テレビの電源を切る。 ブランケットを首から足まで巻いて芋虫と化…

アメノオト

薄暗くなる空の下で 早歩きになる人達を眺めてた こちらを見上げては あからさまに嫌な顔をしてくる 背広を着た後ろ姿 数え切れない中の一つでしかない そんな僕達は 皆、似たような顔をしているんだって 誰かが鼻で笑った 見分けなんてつけられやしないね …

姫黒海燕の彼女

真夜中の田舎道。 街灯は殆ど立っていない。スマホのライトだけを頼りに、行く宛ても無く歩いている。過疎化しているこの集落にコンビニは無い。それに似せたような店はあっても、村の人間が個人で経営している完全にローカルな店。こんな時間には疾うに閉ま…