鳥たちよ、自由に羽ばたいてゆけ

私たちもいつか羽ばたけると信じて

2021-09-01から1ヶ月間の記事一覧

迷子になった背黒鴎

17の秋、ただの日曜日。 アルバイトの休憩時、店から割と近い公園のベンチに腰掛け、スーパーで購入したばかりのサンドイッチとブラックコーヒーを胃に流し込み、背もたれにゆったりと寄り掛かったまま煙草に火を付けた。 私はきっとこれからもこのチンケな…

ワタシはニジキジ ⑵

数年前、私は一度だけ彼に別れ話を持ち掛けたことがある。 理由は探せば幾らでも見つかるけれど、その中でも一番は、普段から私の意見に耳も貸さず、酷い時は私を馬鹿にし、いつも自分の意見が正しいという態度だったからだ。 この先もずっとこのままの調子…

ワタシはニジキジ ⑴

七月七日。 それは彦星と織姫が一年に一度だけ逢える日だという。多くの人はそれを悲劇だと嘆いたり同情したりするのかもしれないが、私からすれば彼等は羨望の対象だ。 想い人とはたまに逢うからこそ更に愛しく感じるし、美しいのだと私は思っている。近く…

信天翁を追いかけて

人生に無駄なことは無い そう言った優しいあの子は 正しくて綺麗だったのに 私はその子を思い出せない 人生は無駄なことだらけ 私はそう思ってしまう けれど それが歪んでいるとも 間違っているとも思えない 生きているとうんざりするくらい 要らないもので…

10月29日の木菟

《久しぶり〜!元気?》 その言葉に律子は苛立っていた。 それが本心からの心配ではなく、挨拶程度に使っているだけだと分かっているからだ。 彼女のことだから、どうせまた自分の用件を話したいが為に連絡をしてきたのだろう。 律子は溜め息を吐いた。 《う…